広島高等裁判所 昭和25年(う)824号 判決
刑法第二百三十八条に所謂暴行脅迫とは、相手方の反抗を抑圧する程度のものであることを要することは所論の通りであるが其の程度は、反抗を抑圧する手段として、一般的客観的に可能と認められる程度のものであれば足り、如何なる場合にも現実的に反抗を抑圧し得るものであること又は現実的に反抗を抑圧したか否かは必要ではない。而して原判決挙示の証拠に依れば被告人が逮捕を免れる為、上田隆夫の顔面を手挙で数回殴打し因つて治療約十日間を要する左上下門歯左上大歯が可動性となる程の口唇打撲傷を負はしめたことを認めることが出来、斯の如き程度の暴行は一般的観察上、右上田の逮捕行為の遂行を抑圧する手段として功を奏する可能性があるものといはなければならぬ。従つて原審が原判示第二の事実を認定し之に対し刑法第二百三十八条を適用し同法第二百四十条前段を以て問擬したのは相当で原判決には所論の様な違法はない。
(註。本件は量刑不当により破棄自判)